コラム:漫画家と政治

赤松さんは、10年に渡り与野党に対してロビイングを続け、有識者会議に出席してきました。

といっても、「それだけ?」とピンとこないかもしれませんので、少し噛み砕いてご紹介したいと思います。

赤松さんが出席してきた会議

公式ホームページに「有識者として招聘された委員会等」が列挙されてます。

ざっと見た感想はたぶん 「たくさん出てるな」 だと思います。

参議院 文教科学委員会
著作権法改正により、映像や音楽が対象だったダウンロード違法化を、要件を限定しつつ漫画を含めた全著作物に広げた。
(2020年6月2日参議院全会一致で賛成)

内閣官房 知的財産戦略本部 次世代知財システム検討委員会
人工知能、自動運転、データベース、デジタルネットワークにおける知財侵略など、デジタル社会における情報の利活用の多様化の中で、次世代の知財システムのあり方について、検討を行なった。

内閣府 知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会 コンテンツ分野会合
出版社や研究者とともに、有識者としてインターネット上の海賊版対策について意見を表明。

インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会
海賊版サイトの情報収集について、最新の情報を政府に提供。

文化庁 文化審議会 法制・基本問題小委員会
TPP著作権条項について、権利者としての意見を表明。

文化庁 メディア芸術連携促進事業 企画委員
入手困難になった漫画などコンテンツのデジタルアーカイブ化について、保管や利活用を行う事業の審査を行う。

国会図書館 資料デジタル化および利用に関わる関係者協議会
マンガ図書館Z設立のノウハウを生かして国立国会図書館のデジタル化についての提案を行う。

MANGA議連
政治とクリエイターを繋ぎ創設に尽力。漫画家の代表として参加。

自民党 知的財産戦略調査会
政府の知的財産政策ビジョンについて有識者として意見を発表。

自民党 法務部会
2013年の児ポ法改正案について、危険性を指摘。

自民党 文部科学部会
静止画DL違法化について、危険性を指摘し、漫画業界が納得できる対案を示した。

自民党 デジタル社会推進知財小委員会
創作者の立場からの海賊版対策や、マンガ図書館Z設立のノウハウを生かした国立国会図書館のデジタル化についての提案を行う。

時間を喰う!

しかし考えてみてください。これらの委員会は、たぶん出席するだけで移動など含めて半日くらい使ってしまうでしょう。会議に向けて資料を準備したり調査したり、日本漫画家協会内で意見を調整したりすればさらに1,2日、使ってしまうことがあってもおかしくありません。

ご存知のとおり、漫画家は多忙です。毎回締め切りに追われ睡眠不足の方も少なくないとよく聞きます。皆さん、残業続きで終電で帰宅する毎日が続く中、「週に半日、ちょっと会議に出て」と言われたらどう思いますか? 「ふざけるな」ですよね。

特に週刊連載の方には、週1の委員会への出席など不可能でしょう。

人気商売ですので、もしそれで原稿を落としたり、クオリティが下がって人気が落ちたりしたら目も当てられません。もうこれだけで「現役の漫画家でやってくれる人なんていないだろうな」と想像つくと思います。

損な役割

さらに、これまた想像つくと思いますが、外部との折衝なので自分たちの意見がそのまま通ることなんてめったにありません。妥協を重ねたり、そもそも全く聞いてもらえないなんてこともあるでしょう。

そんなとき、漫画家協会の他の会員からは不満や突き上げが出てくるかもしれません。胃が痛いですね。

著作隣接権のように、漫画家協会と出版社の間で利害と意見が対立することもあります。編集部から睨まれるかもしれません。

こちらのことを考えても、やっぱり「こういった活動を引き受けてくれる漫画家は、まずいないだろうな」と思いますよね。

赤松健さん登場

ところが、そこに現れたのが赤松健さんです。奇特としか言いようがありません

しかも、ただ出席して漫画家の意向を伝えて終わり、というだけの人ではありません(それだけでも、ここまで見てきたようにすごいと思いますが)。

国会議員の中にさえ、コンテンツにまつわるこれだけ広い問題に対して関わり、結果を残してきた議員はほとんどいないでしょう。

ましてや漫画家の中にはいないし、それ以外の映画、音楽、ゲームなどの分野を見渡しても、いないかもしれません。「ゲーム業界の赤松健がほしい」「音楽協会に赤松健はいないのか」などという声もときどき聞きます。それだけ、赤松さんのような方は希少なのです。理由は前半で見てきたのでもう分かってますね。

「演説が下手」とか「不安」という意見も目にします。私も「演説は、いまいちかな」と思います。選挙に向いているとは決して言えないでしょう。

でも、上の実績をご覧いただければ政治家としてどうでしょうか?

など、政治家に重要な関係者の意見を聞き調整する力は既に十分と言っていいほど実証されています。

山田太郎議員は豪腕とも言える力でまとめ上げますが、一見、便りなさそうに見えるかもしれない赤松さんはまた別のタイプの政策実現能力を持っているのです。